門井 富士夫

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門井 富士夫(鎌倉市立植木小学校長)

植木小学校には、地元で生まれた玉縄桜の木が3本大きく育っています。毎年2月から3月末にかけて、早咲きの花を枝いっぱいに咲かせ、子ども達の卒業を祝ってくれる、植木小学校の大切な木となっています。  

また、地元の「玉縄桜をひろめる会」の方々が、挿し木用の苗を育てるために、毎年、本校の木からも枝を採取されています。今年も採取した枝を、根が出るまでフラワーセンターで育て、その後、地域の人たちに里子として3年間育ててもらい、育った苗を町に植え、玉縄桜が咲くきれいな町にしよう、と夢に向かって活動をされています。

このことを7月の朝会で子ども達に話したところ、5年生の女の子が、「その苗を自分の家でも、預かって育てたい」と頼みにやって来ました。この女の子は、朝会で話を聞いた後、「自分の大好きな桜の苗を家でも育ててみたい」と家族に頼んだとのことでした。

すると、花が大好きなおばあちゃんが、「いっしょに育てよう」と言ってくださり、勇気を得て、たのみにやって来たのです。おばあちゃんと孫がいっしょになって、3年間も力を合わせ、好きな花を育てられる機会を持てるなど、めったにないことと思った私は、早速、「玉縄桜をひろめる会」の方に電話をして、お願いしました。そして、快く申し出を受け入れていただきました。  

この5年生の女の子は、この後、苗がいつ来るのかと、毎日のようにやってきては、「苗はもう来たかなあ」と何度も何度も尋ねていました。早く苗をいただき、女の子とおばあちゃんに渡してあげたいと思っています。

10年後20年後、苗を育てた心は、大きくなった玉縄桜と共に、ふるさとを大切に思う心へと大きく育っていることでしょう。
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 ところで、植木小学校には、玉縄桜にまつわるエピソードがもう一つあります。校門の所に植えられている玉縄桜がそれです。このエピソードは、インターネットのウェザーニュースでも、全国の桜にまつわる話として紹介されました。

内容は次のようなものです。 その年は、卒業もせまっているのに、何かと仲たがいが起こり、まとまらないクラスがありました。子ども達一人一人は、何か卒業の記念になることをしたい、と思っているのに、みんなが一緒になって動けないのです。

そんな時に、担任や校長が投げ掛けたのが、「地元で生まれた玉縄桜の苗を、卒業記念に植えてみないか」ということでした。投げ掛けをして何日か経った時でした。数人の女の子が、校長室を訪ねて来て、「桜の苗を植えてみたい」 と言うのです。「苗を植えよう、とみんなに呼び掛けてお願いをします。先生にもお願いして力を貸してもらいます。だから力を貸してください」というお願いでした。

 各グループがばらばらな状態の中で、勇気ある決断をした女の子たちの必死な思いは、叶えてあげざるを得ません。 この後、子ども達は、先生の力も借りて、話し合いも何とかまとめ、クラス全員で玉縄桜を卒業記念に植えることを決めたのです。

そして、担任の先生からフラワーセンターの所長さんに、苗を分けていただけるよう、お 願いをしてもらいました。その結果、10本程しか残っていない苗の1本を分けていただき、クラスの全員で植え たのです。

こうした子ども達の思いと行動を知ったウェザーニュースの記者の方が、植樹の日や、卒業の日に訪ねて来られ、熱心に様子をビデオに収めておられました。  

 まとまらないクラスを何とかしたいという思いを最後まで諦めることなく叶えた子ども達。1本の玉縄桜の苗には、子ども達のドラマが込められているのです。木の前で、子ども達が二十歳の再会を果たせるよう、玉縄桜の苗が大きく育っていくことを祈っています。 

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