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山崎 和雄(元フラワーセンター大船植物園 園長)
年があらたまると日ざしが日毎に増し、ロウバイやウメのたよりも聞かれ、本格的な春が待ち遠しくなります。春は花の季節、中でも桜の季節です。桜は昔から日本人に親しまれた花木ですが、特に江戸末期に育成された「染井吉野」(そめいよしの)は、私たちにとって最もなじみの深い桜といえるでしょう。葉に先立って樹一面に咲く花、霞んで空に溶けるような淡い花色、その見事な樹形、瞬く間に日本各地に植栽されたのも頷けるところです。
「玉縄桜」は、この「染井吉野」の実生株からフラワーセンターが選抜育成した品種で、花の咲き方や花色は「染井吉野」に似ていますが、花期が2月中下旬から3月中旬と大変早く、気温の低い時期に開花しますので、約一月の長期にわたって観賞できるのが特長です。「染井吉野」を少しでも早く、そして長く見ていたいという私たちの希望をかなえる桜と言えるでしょう。
育成経過は、昭和44年に台木養成を目的に「染井吉野」の種子を播種、その苗の中に発芽が半月ほど早い株があることを発見し、そのまま育成、昭和49年初めて開花、花は「染井吉野」に似、20日ほど早いことを確認、特性調査を継続し、昭和62年種苗登録出願、平成2年に種苗登録されました。品種名は、フラワーセンターに近く、由緒ある地名の「玉縄」を「桜」に冠したものです。
平成5年には、市内8校の小中学校に苗を配布していますので、入学式でなく卒業式に桜をご覧になった方は、きっと「玉縄桜」を見ていたのかと思います。鶴岡八幡宮の檀葛にも5本植えられており、平成7年には、当園にある原木が「かまくらと三浦半島の古木・名木50選」に選ばれています。
「玉縄桜」はこのように大変優れた特徴を持ちますが、当初は残念ながらあまり注目されずにおりました。最近になって「河津桜」をはじめ早咲きの桜に関心が集まるようになり、「玉縄桜をひろめる会」の皆様の活動など「玉縄桜」を植えたいと希望される方も多くなっています。フラワーセンターでは、誰でも増殖することができるよう登録を消失させ、また県内の植木生産者が栽培できるよう母樹の配布を開始しましたので、皆さんが身近な場所で、「玉縄桜」を囲んで、一足早い花見を楽しむことのできる日もそう遠くないことと思われます。

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